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趣味活動の影響により
膝関節痛を呈したと考えられる症例

熊谷総合病院
新藤正貴

1. はじめに
 本症例は、以前より膝関節に時折疼痛が発生していたが、昨年11 月より突然疼痛が悪化した症例
である。今回、特に訴えの強い立ち上がり、しゃがみ込み動作時の疼痛の改善を目的にアプローチし
た結果を報告する。
2. 症例紹介
症例:45 歳男性    職業:製造業
趣味:バイク、スノーボード、ネットサーフィン。
現病歴:以前より左膝関節に時折疼痛(+)だったが、2012 年11 月頃よりしゃがみ込み、立ち上
がり動作での疼痛悪化。整形外科受診するも画像での所見なし。Dr. からも老化現象と言われ疼痛改
善をあきらめていた。
既往歴:24 年前 交通事故にて左大腿骨骨折(ope)、骨盤不全骨折、腰椎骨折、右第5 趾骨折。
11 年前 交通事故にて左肘関節複雑骨折(ope)。
3. 初期評価
疼痛:立ち上がり、しゃがみ込み時に左膝関節内側に運動時痛、圧痛(+)。
筋緊張:座位、立位での腹筋群低緊張。左内側ハムストリングス、左内転筋群過緊張。
つま先立ち:両側とも第5 列に荷重がかかっており第1 列への荷重は弱い。実施時軽度頸部伸展。
立ち上がり:骨盤後傾位のまま体幹を屈曲させていき動作実施。重心の前方移動は不十分。
しゃがみ込み:右荷重。右骨盤が後退している。足部は右が後方に下がっており外旋している。
4. アプローチ
1. 両下肢運動誘導 2.PNF 3. 腹筋群促通 4. つま先立ち
5. 再評価
疼痛:運動時痛、圧痛(-)。
筋緊張:座位、立位での低緊張改善。左内側ハムストリングス、左内転筋群過緊張改善。
つま先立ち:両側第1 列への荷重量増加。頸部伸展軽減。
立ち上がり:重心の前方移動は不十分であるが、動作開始時骨盤前傾みられる。
しゃがみ込み:荷重均等。骨盤後退改善。右足部の外旋、足部の後退改善。
6. 考察
 本症例は、趣味活動、日常生活の影響により姿勢不良を呈し、その結果左膝関節内側に疼痛が出現
したと考えられる症例である。疼痛が出現した原因としては、趣味活動の中でも特にインターネット
使用時間が長いことから、その時の姿勢不良の影響が強いと考えられた。実際、インターネット使用
時は左下肢を伸展、右下肢は屈曲させて足部を左膝関節の下に位置させ、骨盤は後傾し右骨盤は後退。
体幹は屈曲し右上肢を後方に突き、支持を行っていた。この姿勢により腹筋群の活動性は低下、右骨
盤が後退することで内転筋、内側ハムストリングスが過緊張となったと考えられる。また、疼痛悪化
前にインターネット使用頻度が増加したとのことから関連が強いと考えた。そのため、骨盤帯、体幹、
下肢のアライメント修正、腹筋群の活動性向上を行うことで疼痛、筋緊張の改善がみられると考えた
ためアプローチとして下肢、胸郭への徒手誘導、PNF 骨盤帯前方挙上パターン、腹筋群の促通、第
1 列への荷重を意識させてのつま先立ちを行った。その結果、運動時痛、圧痛の消失、左内側ハムス
トリングス、左内転筋群の過緊張の改善が認められた。また、立ち上がり動作開始時に骨盤の前傾が
みられ、しゃがみ込み時には均等に荷重がかかるようになった。しかし、症例のADL、趣味の内容
から疼痛が再発することが考えられたため、Home Program として今回行ったつま先立ちを指導し
経過観察を行うこととなった。
今回の症例は、疼痛悪化の前にインターネット使用頻度が増加したとのことから今回の考察に至った。
また、インターネットの普及が増加した今日、このような原因で疼痛を呈す人々が今後も増加してい
くことが予想される。また、患者はインターネットの使用頻度増加と疼痛が関連しているとは考えて
いない人が大多数である。そのため、今後は評価、特に問診でセラピストがどこまで患者のADL を
把握することがさらに重要になっていくと考えられる。
7. まとめ
・趣味、ADLの影響から姿勢アライメント不良を起こした症例に対し下肢、胸郭に対しての徒手誘
 導、PNF、運動指導を行うことで主訴の改善がみられた。
・今後、今回のような症例が増加していくと考えられるため、今まで以上にADLの把握が重要になって
 くると考えられる。 

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