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艇王
~ BATTLE OF 6 ~

GAVAI リハビリテーション研究会
医療法人 信愛整形外科医院
松尾祥平

【はじめに】
 福岡県にボートレーサーを養成するために日本モーターボート競走会が設置した養成所が ある。演者はその養成校に定期的に訪問し、訓練生と係る機会を得ている。ボートレーサーの 養成所は全国に一か所で、訓練生は一年間という限られた時間の中で研修が行われる。他の 競技と同じくボートレースにも競技特性があり、特に乗艇姿勢は割座に近く特異的な姿勢と なり、障害も多岐にわたる。しかし、訓練生は身体に異変をきたしても過密なスケジュール の為、医療機関への受診やセルフケアも十分に行われていないのが現状である。今回は、短 時間で限られた項目ではあるが、訓練生と係る中で得られた競技特性と障害特性について考 察したいと思う。

【対象/ 方法】
 対象は養成校訪問時に対応することが出来た17 名(男15 名、女2 名)とした。そのうち、 男6 名が右膝に何らかの疼痛(内側3 名、外側2 名、前面1 名)を訴えていた。理学療法評 価として全員の腹臥位での左右の股関節内旋角度と左右の上前腸骨棘(以下ASIS)と上後腸 骨棘(以下PSIS)を触診し骨盤のアライメントを確認した。右膝痛が有る群と無い群の股関 節内旋角度を比較した。

【結果】
 対応のあるt検定を用い、右膝に何らかの疼痛が有る群の平均股関節内旋角度は右/ 左: 34.1°/42.5° で優位差があった。(p <0.05)疼痛が無い群の平均股関節内旋角度は右/ 左:35.0°: 35.8° で優位差が無かった。(p <0.05)また疼痛がある群の骨盤のアライメントは全例、右 ASIS 低位、左ASIS 高位、右PSIS 高位、左PSIS 低位となっていた。

【考察】
 股関節内旋の可動域は右膝痛を有する群全員で右下肢に比べ、左下肢において大きくなっ ていた。競技特性であるCKC に近いような姿勢での骨盤帯より上部の左回旋により、骨盤の アライメントに左右差を生じ、股関節の回旋角度に左右差を生じていると考えられる。右股 関節の内旋の可動域の減少は乗艇姿勢時の割座を困難にし、代償的に膝関節に対して過剰の 外旋ストレスが加わり、膝関節の内外側の疼痛につながると考えられる。

【おわりに】
 ボートレースにおいても他の競技と同様に競技特性を解剖学・運動学を踏まえて考察し、訓 練生自身のセルフケアにつなげる必要がある。また今回取り上げた膝痛以外にも、腰痛や長 母指伸筋腱断裂など多様な障害の訴えがあるため、さらに考察を深め、障害予防に努めたい と思う。

関連動画※動画を見るには
「皮膚運動学」 5巻 第5回 膝関節、足関節、足部に対するアプローチ 【1/1】
「肩関節障害に対する理学療法」 5巻 第5回 肩の疼痛 その1 ~構造と機能的問題~ 【1/1】