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足底感覚から立位バランスを考える
~足底感覚障害を呈した症例を通して~

いちはら病院
理学療法士 梶間 健史

【はじめに】
 ヒトは立位や歩行時、足底でのみ地表面に接触している。よって、安定した立位や歩行に は足底からの正常な感覚入力が必要不可欠と言われている。 今回、大腿骨頚部骨折により当院回復期病棟に入院された方を担当させていただく機会を得 た。本症例は両足底の感覚障害の出現が立位や歩行能力に大きく影響し、歩行手段の再検討 を要した。足底感覚について学んだことを交えながら、本症例について報告する。

【症例紹介】
症例:80 歳代 女性 診断名:右大腿骨頚部基部骨折(右人工骨頭挿入術)
現病歴:自宅で独歩をしようとしたところ転倒 既往歴:腰部脊柱管狭窄症(14 年前ope)
HOPE:歩けるようになりたい。またデイケアに通いたい。
受傷前ADL:屋内T-cane、屋外シルバーカー。右SHB 使用。ダーメンコルセット着用

【理学療法評価】
(術後18 日) ROM(Rt/Lt):股屈曲100°/120° 伸展0°/0°.膝伸展-5°/-5°
MMT(Rt/Lt):体幹屈曲2 伸展2.股伸展2/2 外転3/3.膝屈曲2/3 伸展4/4.足背屈1/3 底屈2-/2- 足指屈曲1/3 伸展1/3
感覚:右足趾運動覚、表在覚(足底面・足背)中等度鈍麻(5/10).
立位:片手すり把持にて自立。フリーハンド立位不可。胸腰椎後弯・骨盤後傾・股関節膝関 節軽度屈曲・足関節背屈。COP 左後方偏移。
歩行:平行棒内3 往復見守り。後方重心にて上肢は引き動作優位。両股関節伸展みられず、 TSt 短縮し歩幅小さく、足部での蹴り出しなし(forefoot locker 消失)。視線は下方に向き、 動作時は修正困難。
(しびれ出現後 術後7 週)
感覚:左足指運動覚、表在覚中等度鈍麻(足底4/10, 足背5/10).MMT 左足背屈2 底屈 2-, 足指屈曲2 伸展2
立位:両上肢支持立位にて、前後左右への重心移動困難。

【治療内容】
①立位・歩行での荷重下での感覚入力 ②足底刺激に対してのCOP 移動

【理学療法経過・考察】
 本症例は、もともと腰部脊柱管狭窄症のope 後からあった右下肢のしびれに加え、左下肢 のしびれの出現により左下肢のクリアランス低下、左TSt における蹴り出しの消失、荷重感 覚低下による左右への重心移動やCOP の移動が困難となった。その結果、歩行能力も低下し、 ASW では段差昇降も不可能となった。両下肢にしびれが出現したことで、足底からの正常な 感覚入力がされないことでCOP が収束せず、立位や歩行における制御が困難になったと考 えられる。さらに下肢の筋力低下や既往の腰部脊柱管狭窄症による体幹の機能不全がより姿 勢制御を困難とし、視覚系優位でかつ常に上肢に依存した動作を余儀なくされたと思われる。 本症例は、足底への感覚入力やCOP 移動の練習を行ったことで、感覚自体の変化はみられなっ たものの、段差昇降が可能となるなど、若干ではあるが動作能力が向上した。この結果から、 実際に感覚の改善がみられなくとも、足底感覚やCOP の移動を必要とする練習を行うことで、 他の機能の学習が促されることも考えられる。立位や歩行において足底からの感覚は重要で あり、単純な表在覚や運動覚だけでなく、実際の動作場面での評価も必要であると本症例を 通して強く感じた。

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