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軸の変化は測れるか
~体の変化を簡便な方法で捉える~

医療法人社団弘人会中田病院リハビリテーション科
法貴篤史

【背景】
 臨床において、セラピストの「思い込み・固執」を出来る限り排除することは重要である。評価・ 治療・再評価を繰り返すなかで思い込みが生じていないか、偏った見方になっていないか正確に チェックすることが、アプローチの中身を決定するためには必要と考える。ただし人間の動き・機 能に関して、客観的評価や数値化することが難しい項目も多くあり、臨床において時間・空間・経 済的制約がある中での評価はその人の感覚に頼ったものになりやすい。しかし、評価方法を工夫す れば客観的に捉えることも可能なのではないかと考える。

【目的】
 評価が難しいものとして、軸の評価方法について考えてみる。力の強さを表す代表的な評価とし て筋力があり、筋の収縮により発揮できる力の量を測っている。ただし筋で支えることだけが身体 がもつ機能ではなく、骨や靭帯など受動的支持機構を利用して支えることで効率的に力を発揮でき る。この機能に対して評価し、アプローチ前後でどのように変化するか比較することを今回の目的 とする。

【方法】
 セラパテを容器の中に入れ、上から重さを加えることで厚さを均一にして形を整える。イスの上 にセラパテが右側に来るように容器を置き、被検者はセラパテの上に右坐骨がのるようにして座位 をとる。重量物として本約3kg を右上肢で10 秒間保持し(上腕下垂、肘屈曲90°)、セラパテの 坐骨部位の凹みの深さ、大きさを測る。エクササイズ前後でセラパテの凹みに変化がみられるかを 比較・検討する。対象被検者は健常成人20 名とし、既往に骨折、腰痛などがないものとした。エ クササイズは座位で3 種類行う。
①両上肢を左右に伸ばし、左坐骨を挙上・右方向へリーチ(両足底接地)
②両上肢を胸の前で組み、右に体幹回旋(両足底接地)
③左足を組み両手掌を頭の上にのせ、右足で床を押しながら頭で手掌を押す

【結果】
 エクササイズ前後での縦・横・深さの差の平均値と標準偏差は、それぞれ0.005cm(SD1.314)、 0.055cm(SD0.856)、0.06 cm(SD0.226) 、だった。今回の検証では、それぞれの項目に関し てWilcoxon signed-rank test で有意差が確認できなかった。縦、横の大きさがともにエクササイ ズ後に減少したのは6 名、ともに増加したのは8 名だった。深さは減少したのは4 名、増加した のは8 名だった。

【考察】
 今回の結果から、軸の変化を数値で正確に測定するには至らなかった。検証をするにあたって、 「エクササイズにより坐骨での支持量が増加し凹みは深く大きさは大きくなるのではないか」、と仮 定した。しかしデータは一定の傾向にはならず、ばらつきがみられた。片側の坐骨支持が促される ことで点での支持ができ、凹みは増加したが大きさは減少した例があったと思われる。他にエクサ サイズの③で右坐骨支持を感じられなかったとの感想をもった例も数名あった。左股関節外旋可動 域が十分でなく右への重心移動が少なかった、骨盤前傾が十分に行えず面での支持になった、といっ た要因が考えられる。また、坐骨支持量の変化がそのまま「軸」を捉えているか、という点は検討 すべき部分が多く、今回の内容を再度検証する必要があると感じる。

【まとめ】
 多くの場合、軸の有無・変化を評価する方法は主観的なものになる。ただし方法次第で評価とし て数値化することが可能で、今後治療アプローチの方向性の裏付けにつながる可能性がある、とい えるのではないか。また、今回は臨床で身近にあるものを利用して評価を行った。高価な機材だけ でなく、今ある環境で適切な評価・治療アプローチを行う工夫も必要ではないか。評価が自分の中 での都合のいい尺度ではなく、結果を得るための「思い込み・固執の修正」としてあるように、日々 の自分の臨床を振り返りたい。臨床での評価の重要性を考え、結果につながるアプローチを目指し ていきたい。

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